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「本物さ。一万回目のお祈りで、願いがかなうんだからな。ふさわしい舞台を用意してやったんだ、感謝しろ」 「えーっ! せっかくお願いがかなうなら、そう言ってくれれば、何かちゃんとしたお願い事を考えたのに!」  わたしが文句を言うと、伊奈利はポツンと言った。 「……ちぇっ、ちゃんとしたお願い事ってなんだよ。オレが出てきたんじゃ不満だったのか?」  伊奈利は腕組みをしてそっぽを向いた。 「オレは色葉と遊びたいってずっと思ってた。だから毎日、数を数えてたのに」  そういえば、9999回目の時も一万回目の時も、すごく喜んでいる声が聞こえたっけ。それじゃあ、あの声はもしかして、伊奈利だったんだろうか。  それに、あの日の急な雨は? 迷い込んだ知らない道。さびれたバス停。キレイに見えたベンチ。 「もしかして、バス停のベンチに誘い込んだのも?」 「……」  伊奈利はすねた顔で黙っていた。  やっぱり、コックリさんは伊奈利が仕組んでいたんだ! 「えぇ~」  わたしの一万回のお祈りの効力を使って、伊奈利がちゃっかり自分の願いをかなえてしまったなんてあきれちゃう!
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