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くわえやすいように、食パン1枚を3等分に切って細長くして、口に押し込んでくれる。
こんがりきつね色に焼けたトーストからバターがじゅわっとしみ出てくる。
「うんまぁっ!」
わたしがパンをモグモグしながら言うと、お兄がウンウン、と満足げにうなずいた。
お兄は7つ年上の大学一年生。年が離れているから、生まれた時からのわたしの世話係をしてくれていて、今でも時々……ううん、しょっちゅう口うるさいけど、優しいんだ。トーストはありがたいけれど、それよりも。
「お兄、なんで起こしてくれなかったのよぉ」とついボヤいてしまう。
「よく寝ていたから、起こしたらかわいそうだと思って」
紅茶を片手に、にっこりするお兄に、ガクッと肩が落ちる。残念なことに、お兄の優しさはいつもちょっとズレている。
「行ってきまーす!」
スニーカーのつま先を玄関のタタキにコンコンッと打ち付けると、全速力で走り出した。ランドセルの中で、筆箱が早く早くとカタカタ鳴る。
家の隣にある紅月稲荷神社の鳥居に差し掛かると、おキツネ様の像が鳥居の前からこちらを見ているのが目に入ってくる。切れ長の目のふちが紅くて、いつもこっちを見てる。
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