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鳥居を守るように二つの像が向かい合わせに座っていて、片方のおキツネ様は丸い珠を、もう一つのおキツネ様は巻物をくわえている。
今はもうおキツネ様は神様のお使いなんだって知っているけれど、小さい頃は、巻物をくわえているおキツネ様が、忍者みたいだなって思っていた。変化して人間になったおキツネ様と、一緒に遊べたら楽しいだろうなって。
おキツネ様がいる鳥居の前を通るときは、いつも立ち止まって手を合わせているんだ。
「でもでも、遅刻しそうだし。今日だけは、ごめんなさーい!」と心の中で言い訳して、赤い鳥居がある石段の前を素通りしようとした時、ザアッと正面から風が吹きつけた。
まるで通せんぼするみたいに。
「うわっぷっぷ」
ついでに風に飛ばされてきた神社の桜の花びらが、顔に何枚も貼りついた。
桜の花びらがあたっても、もちろん痛くはないけれど、わたしは結局足を止めて、眼や口に飛び込んできた花びらをつまんで取る羽目になった。
えーい、こうなったらもう、いつも通りお祈りしても同じだ!
わたしは両手をパンッと合わせた。
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