練られた衝動

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練られた衝動

「そうだ、『ガーデンフラワーパーク』へ行こう」  キッチンで皿洗いをしていると、リビングからそんな声が聞こえてきた。  何事かと皿と布巾を両手にリビングの方へと歩いていく。リビングではソファーに座った妹の奏(かなで)がテレビに熱中していた。  テレビでは、奏の大好きな『花の特集』が放送されている。 「ガーデンフラワーパークって、お花がたくさんあるところ?」 「そう。たくさんのお花を見ておきたいなと思って」  8月現在、大学2年生の俺は夏休みを謳歌していた。  やることといえば週4で入っているバイトくらい。それ以外は暇な日々を過ごしていたので、家にいる妹に「行きたいところがあったら、どこでも連れていってあげるぞ」と言っておいた。  妹は「急に言われても出てこないよ」と嘆いていた。だから保留という形を取っていたのだが、一日経った今ようやく行きたいところが決まったらしい。 「分かった。明日はバイトだから、明後日二人で行こうか」 「うん。楽しみだなー」  そう言って、再びテレビへと目を向ける。瞳をキラキラさせて視聴する姿を微笑ましく思いながら、俺は再びキッチンへと戻った。
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