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「キャッー!」
上から降ってくる滝のような水を受け、奏は悲鳴を上げた。とは言っても、実際に受けたのはクルーズに建造された三角型のゴム製の屋根だ。屋根に流れた水は下に流れる水へと浸透していく。たまに、クルーズの手すりに当たった水が船内にいる俺たちへと飛んでくる。夏場の冷たい水は心地よかった。
3日後、俺たちは予定通り『ヨーロッパ村』へとやってきていた。
8月でも平日のためか、あまり人は見られなかった。そのため、アトラクションに乗る際の待ち時間は発生せず、俺たちは数多くのアトラクションを楽しむことができた。
『ハッピークルーズ』を終え、次のアトラクションへと歩いていく。
最後にやってきたのは俺が中学生の時だったと思う。その頃の記憶がほとんどないため、全てのアトラクションが新鮮で楽しかった。
逆に奏はよく覚えていた。「乗ったことあるアトラクションだ」だとか、「あの時はなかったアトラクションだ」だとか、各々俺に説明してくれる。大した記憶力だ。
前を歩く奏の動きが不意に止まった。疑問に思いながら彼女の視線の先へと目を向けた。
突如弾ける大きな水飛沫。高いところから一直線に急降下した丸太のボートが地面に当たった衝撃で上がったみたいだ。
スプラッシュ・モンセラート。
水の中を走るジェットコースターだ。
「あれに乗りたいのか?」
奏の横につき、語りかける。彼女は俺の方にゆっくりと顔を向けると首を左右にふった。
「私、絶叫マシンは嫌いだからいいや」
「……そっか」
「うん。代わりにあそこに行こ!」
そう言って指をさしたのは『キャンブロ劇場』。映画のようにスクリーンに映された映像を鑑賞するアトラクションだ。どうやら色々と乗って疲れたらしい。
俺たちはキャンブロ劇場へと入っていった。
キャンブロ劇場ではドラマやアニメなど全3作品の映像が用意されていた。奏にどれにするか尋ねたところ「全部」と返答された。
席についてゆっくりしながら流れる映像へと目を凝らす。疲労が溜まっていたため眠ってしまうのではないかと不安だったが、内容が案外面白く飽きずに見ることができた。
「楽しかったね」
全ての上演を終え、俺たちはアトラクションを後にした。
「途中寝てただろ」
言い出しっぺの奏は俺よりは興味が薄かったのか途中小さな寝息を立てながら眠っていた。空調の効いた部屋が心地よかったのだろう。
「……そうだ、次は『アドベンチャーゾーン』へ行こう」
俺の言葉がなかったかのように、奏は話をすり替える。なんて都合のいい妹なのだろう。しかし、そんな姿がまた微笑ましい。
「急だな。どうしてアドベンチャーゾーンに?」
「いやー、さっきのアニメで動物見てたら、実際の動物が見たくなっちゃって」
「なるほど。バイトは明日休みで、それから4連勤だから来週あたりでいいか?」
「うーん。できれば明日がいいかな?」
「2日連続は体力的にキツくないか?」
「なんとか頑張る」
「……分かったよ。その代わり今日はもう帰ろう」
終園時間まで遊ぶつもりだったが、それでは帰るのが夜遅くなる。明日も出かけるのであれば、早いうちに帰ったほうがいいと思って奏に提案した。奏は嫌がることなく首を上下に振ってくれた。
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