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導入
あなたは真夜中の道を歩いている。時刻はもうすぐ0時を回る。仕事が遅くなったのか、友人と遊んだ帰りか。あるいは夜こそがあなたの時間であるか。あなたはいつも通りのその道を歩いている。
ふと、見慣れた景色の中に違和感を覚える。
立ち並ぶ建物の間にぽっかりと空いた真四角の空間がある。民家か商店か建っていたはずだが、いつの間にか取り壊されたのだろうか。
いや、ただの空き地ではない。1mほどの赤い鳥居が建てられている。奥に小さな社があるようだが暗くてよく見えない。調べるには鳥居をくぐってもっと近づく必要がある。
「ここ……なんだっけ。わりと通りがかる場所ではあるけど、いつの間に取り壊してたんだろ。無くなってみるまで分からなかったってことは大して重要視もしてなかったんだろうけど。」
思わず、足を向けようとしている自分に気づいて一度立ち止まる。
これは、大丈夫だろうか。
振り返れば見慣れた景色が広がっている。
世の中には、関わらない方がいいことがあるというのは重々承知だ。
ふと、今立っている場所は狭間かもしれないと思う。
「でもさ……多分、もう。気にしてしまった段階で引けないんだよね。」
遠くにちらりと見える鳥居の奥に、どうしても気持ちが引かれているのだから仕方がない。
「鳥居は悪いものじゃないって信じてるよ。」
誰に言うともなく呟いて鳥居をくぐった。
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