3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
旧校舎へ行こう
冴木 悠人が通っている高校には新校舎と旧校舎がある。
各クラスの教室も職員室も新校舎にあり、旧校舎は1階の数部屋しか使われていない。2階より上は掃除もされておらず、ほぼ物置と化していた。
建物自体も古く、不気味な雰囲気を醸し出している為、生徒も教師もあまり近寄らない。幽霊を見た、なんて噂もあるくらいだ。
そんな旧校舎だが、ロマンチックな噂もあった。
「夜に旧校舎3階の鏡を見ると、未来の恋人が映る」というものだ。
「恋人になって欲しい人、または理想の恋人の写真や絵を鏡に映すと、その通りの恋人ができる」というパターンもある。
悠人には現在恋人がおらず、旧校舎の噂はとても興味を惹かれるものだった。恋人ができるという噂が本当だとしたら、そんな美味しい話はない。
だが、1人で行くのはちょっと、いや、かなり嫌だ。なので、クラスメイトを誘うことにした。
「なー、音無も気になるだろ? 一緒に行こうぜ」
「いいよ!」
悠人のクラスメイトの音無 響はお人好しで、基本的に頼まれごとを断らない。今も、特に何も考えずに反射的に承諾しているようだった。
そんな響を危なっかしいと感じながらも、悠人は誘いを断られなかったことに安堵した。そんな悠人を咎めるような声が聞こえてくる。
「ちょっと、悠人! 音無くんを変なことに誘わないでよ。先生に見つかったら怒られるわよ」
声の主は、悠人の幼馴染の香坂 彩世だった。
秀才でしっかり者の彩世は、悠人にとって頭の上がらない存在だ。
最初のコメントを投稿しよう!