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「変なことじゃねーよ」
悠人は母親に注意された時のような、ぶっきらぼうな返事を彩世にしてしまう。
そう、これは変なことではなく、悠人の青春のためにはとても重要なことだった。
悲しいことに、現時点で悠人には彼女ができる気配がない。今は5月末。ゴールデンウィークという素晴らしい休日は過ぎてしまったが、これからビッグイベントである夏休みが待っている。彼女ができれば、夏休みは楽しい恋人同士の時間を過ごすことができるのだ。
夏休みに入る前に彼女が欲しい! 彼女と海かプールに行って、水着姿を拝みたい!
悠人は、鏡の噂に賭けていた。
そんな悠人とは反対に、響はおっとりした口調で彩世に話していた。
「香坂さんも一緒に行く? 旧校舎の鏡を見に行くんだぁ」
真面目な彩世が、先生に注意されるようなことをするわけがないと悠人は考えていた。
なので、彩世の「私も行く」という返事が聞こえた時は驚いた。
「何でお前も行くんだよ」
「別にいいじゃない。悠人が変なことしないか、見張るためよ! 音無君が危険な目に遭わないか心配だし」
できれば来てほしくない。気まずい。
そう悠人は思ったが、彩世は変なところで頑固だから説得するのも面倒だ。それに先生に告げ口されても困る。悠人は、諦めて彩世の気が済むようにしてやることにした。
こうして、3人で旧校舎へ行くこととなった。
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