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「うん。あっさりした塩と、醤油しかなかったらから、味噌ラーメンはイメージを伝えて作ってもらったことがある。ちなみに中華料理とか和食とかのお店もあるみたい。結構、何でもありな世界みだいだね」
「そういえば、本で和食に関する内容があったかもしれない。今まで何とも思ってなかったけど、不思議な世界観なのね」
前世を思い出すことがなければ、全部当たり前として受け取っていただろう。
「リア家は大衆食堂みたいなところとか行かないだろうからね。知らなくて当然だよ」
「この世界で生きてきたのに、まだまだ知らないことがたくさんあるのね」
皇太子妃たるもの、もっと街のことを知っておくべきだったわ。
「これから一緒に、たくさん知っていこう。健康だしお金はあるし、多少の不自由はあるけどやりたいことだってできるよ」
「そうね。夢みたい」
「……うん。ほんとに、夢みたいだね」
言いつつ、鼻を啜るクロード。瞬きがゆっくりになって、その目が潤んでいるのがわかった。
クロードの涙のわけは、わからない。まだ、この世界はわからないことだらけなのだ。きっとこれから、わかることがたくさんある。
「泣き虫なのは、ここでも変わらないのね」
「──え?」
どうか今世は、愛しいこの人と末永く一緒にいられることを切に願った。
END
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