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ミーナは「努力、根性!」と聞くのも嫌がるタイプだったが、獣人の番になる為になら多少面倒なことも我慢してきた。
獣人受けする香水があると聞きつければ、パパに強請って取り寄せるような頭の悪い努力もしたし、獣人の患者がいる時は病院の手伝いを率先して行う珍妙な勤勉さも発揮した。
友好関係だって獣人と知り合う為に大切にしたのだ。
獣人を専門に研究する学者を父を持つ、フリダという同級生がいた。
本が友達で学友とはあまり話をしないような優等生フリダに、ミーナはしつこく付きまとった。
フリダと仲良くなるためになら、嫌いな勉強で徹夜してしまうくらいにはミーナは偏執的だった。
仲良くなれたかどうかは別として、やがて二人は学校の首席と次席ということで一目置かれる存在となった。
もちろん、フリダにまとわりついて行動をともにしていたのも、あわよくば獣人と知り合いたいという下心からに他ならない。
ミーナは厚かましいことに、押しかけるようにしてフリダの家に遊びに行ったりもした。
そこはフリダの父を「博士」と慕う獣人たちが常に出入りする、ミーナにとっては夢のような家だった。
ミーナはそこで残酷な現実を知ることになる。
それは、獣人が魅力を感じるタイプにミーナは全然あてはまらないという事だ。
出入りする獣人の誰もミーナには興味を示さず、フリダの妹ばかりがちやほやされる光景を目にした。フリダの家に集っている獣人は皆、ミーナの横を通り過ぎて行くばかりだった。
そんなことがあってもミーナの無駄な抵抗は長く続いていた。
学校を卒業後、成人してからは、父にねだって建ててもらった家に獣人を招いて、口説いたり迫ったりした。獣人の里から来たばかりの獣人は滞在する場所に困ることが多かったので、それを狙ったのだ。
そのおかしな献身は噂になったようで、ミーナの家は獣人の間で有名な都合のいい宿泊所になり下がった。
宿泊所になって、確かに獣人との出会いは増えた。しかし獣人は誰もミーナを恋愛対象として見ない。
ミーナの獣人への思いはどんどん捻くれた方向へ進んでいった。
*
最近も、ミーナは獣人に立て続けに振られた。
まず、黒い目の可愛らしい犬獣人に迫ったら、噛まれて狂犬病の注射を打ちに行かなければならなくなった。
次に、獅子獣人を家に招いたら生活できないくらいに小遣いをむしり取られて、貯蓄が底をつく災難にあった。
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