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「あの子が猛獣に食われると思ったら、おかしくなったんだ。犬歯の歯型まで用意して、あの子から危険な獅子を退けるヒーローになったつもりだった」
ミーナは、多少相槌を打ってやるのが礼儀かと、ふんふんとうなずいた。
「でもさ、なんでウサギなんて殺したの? さすがにフリダのウサギの話はひくわ~」
「リオに濡れ衣を着せて追い出す為だった。ウサギ小屋に行った時に、俺だって馬鹿馬鹿しいと思ったんだ。こんな事、何の意味も無いと思った。でも悪魔に背中を押された――」
コニーの苦しんでいる顔をみても、ミーナは単に「エロい顔だな」としか思わない。
「ウサギ小屋に蛇が入り込んでいたんだ。そんなことあるのかよって思うだろ? ウサギは蛇に噛まれた後で、俺が見た時はもう虫の息だった。瀕死だったけど、自分の手で殺さないことだって出来た。でも、ウサギにトドメを刺したのはこの俺だ。天啓だと思った……これでリオを追い出せると――俺は確かにそういう奴だった」
「ふーん、思っている以上にヤレちゃうときって、あるものなのね。そういうの普通の殺意よりうんと怖いわ」
一般論的な返しをするミーナは、コニーの告白よりも次に何を飲もうかなということの方に気がそれている。
二人とも酒がすすむ。
頭のどこかで明日、二日酔いになるなと考えているのに、今の快楽を貪ってしまう。
だって酒が美味しい。
「ある時、博士が通信機で話しているのを聞いた。きっとヒューイ隊長と話していたんだと思う。リオがダリアの番かもしれないと言っていた。俺は、そんなのないと憤った。せっかく最初に見つけたのにって……」
「それで、取り返しのつかない間違い方をしてしまったってわけね」
ミーナに適当なまとめ方をされて、コニーの懺悔は終わる。
ミーナはもとからコニーの話など聞くつもりがなかったので、晴れやかに「たいへんだったわね」などと適当なことを言う。
「お前は? 何が不満で獣人にばかりこだわってるんだ?」
重い告白をしたのに手ごたえがなくて、ばつが悪くなったのか、コニーは話題を変える。
「んー、なんだろ。私ね、その一連の事件にちょっとだけ関わり合いがあるの」
「どういうことだ?」
ミーナは自分のグラスが空いてしまったので、手酌で好きなようにワインを注ぐ。
コニーと食事するのは気が楽だ。
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