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タンタンと不機嫌な足音が聞こえて、内鍵を開けてコニーが仏頂面で出迎える。
「遅い。お茶だけじゃなかったのか……うわっ、お前ヒトとヤってきたな! そんな匂いをさせて職場に来るな!!」
コニーが顔を背けてのけぞる。
「うわぁ、ばれたかぁ」
ミーナは服も髪もよれよれで、キスをされて化粧もぐちゃぐちゃだ。
「猥褻行為で里なら逮捕されかねないからな。帰れ! そんな匂いでその辺を歩くな」
警戒音を立てながらコニーがミーナを部屋の外に押し出す。
「まぁ、そうだけど。とりあえずさっきの書類見せてよ。一件、気になるやつがあったのよね」
残していった仕事の話をすると、コニーは窓を開けて換気しながらしぶしぶ仕事に戻った。
外から夜の冷たい空気が入ってくる。
机にあれだけあった書類は、もうだいぶ片付いていた。
「それで、どうだったんだ?」
書類を書きながらコニーがミーナにたずねる。
「私、また、相手を間違えたみたいで。なんか違うな~って、途中でやめて帰ってきちゃった」
コニーは書類をまとめて机に戻し、何か言いたげにミーナを見上げる。
ミーナはその視線を受け止めて、二人はしばし見つめ合う。
(これは脈ありかしら)
ミーナは瞬きをして、いそいそと椅子に座ったコニーの方に回り込む。
ミーナは情事の途中で燻っていた熱を思い出して、甘えるようにコニーに擦り寄る。
珍しく、仕事の途中だと退ける事なく、コニーはミーナを抱き留めた。
「まぁ、間違えたんだろうな。どう考えても間違ってる。なんだこれ、跡がついてるぞ」
所有印のように首筋に散った鬱血の跡を見てコニーは眉を顰めた。
「ねぇ、今からできる?」
「お前、この仕事の量どうするつもりだ」
「緊急のはもう終わってるよね?」
「それは午前中に片づけた」
ミーナは、ぱっとコニーから離れて、自分の机に走る。
そして、魔術式の通信機のボタンを慌ただしく押して、どこかへ連絡を始める。
「ヒューイ隊長? ミーナですけど。私、今から番休暇を申請するんで、コニーと早退してもいいですか?……はい? いいえ、ちがいますけど、ダメですか? 審査とかあるんですか? え? え? そんなの私、ヒトなんで分からないです。コニーに後で聞いてください」
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