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「それで、なんだっけ? パパが立派な結婚相手を紹介してくれるんだから、働かないで結婚しちゃえばいいのよ。思春期でもあるまいし、いつまで反抗してるの? どうせ仕事だって真面目にする気ないんでしょ? あんたから仕事が好きとか、やり甲斐がとか、聞いたことないわよ」
「ヒトになんかにモテたって仕方ないのよ。パパの大きな家を見て私に寄って来るんだから! わたしはねっ、獣人みたいな出会いがしたいの! 一目会って恋に落ちるみたいなやつが! 獣人が!! ケモちんがっ!!!」
年甲斐もなく子どものように足をばたつかせる。
フリダは苛立って、ミーナが座ってる椅子を蹴った。
ミーナは昔から甘ったれだった。
それは他の同級生が働き始めた後も変わらなかった。
ミーナの父はそんなミーナに何も期待していなかったし、ミーナが獣人に好かれないのを既に把握していた。
いつか観念するだろうと、最近では見合い話を持ち掛けてミーナが獣人に飽きるのを待っている。
「どうして、私にはケモちん様が降臨しないの? ずるい! 世のケモちんに愛されている奴らが憎い!」
ミーナがケモちんケモちんと叫び始めたので、ミーナに声をかけようかと様子を見ていた飲んだくれも頭を振り、自分のグラスに視線を戻した。
誰も獣人好きな変わり者となんか知り合いになりたくないのだ。
「何、夢見てるのよ。ケモちんとか下衆なこと言う女が、一目惚れとか乙女みたいなことを言わないでくれる?」
ミーナはさっきから飲むよりこぼす方が多い酒のグラスを、ドンと置いた。
「いい? フリダ、よくお聞き! ケモちんはね、たいへん良いものなのっ! ヒトちんしか知らないあんたには永遠にわからないわよ」
フリダは頭を抱えた。夫の話まで言及されてはたまらない。
「わかるわけないじゃない。もう、ケモちんだけ欲しいなら、猫獣人とかに乗ってもらえばいいじゃない」
シモな話で盛り上がるのは避けたかったが、放置しておけばミーナは大声を出し始めるだろう。
「猫獣人ねぇ……猫獣人はこっちから、すごく一生懸命誘わないとしてくれないからヤダ。いざ挿れたらすぐ終わって帰っちゃうし」
「何を贅沢言ってんのよ、生意気。じゃぁ兎の獣人とか? 割と情熱的だって話だけど……」
フリダは顔をしかめながら、知識として知っている獣人の性事情の話をしていく。
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