性癖を拗らせた原因の〇〇〇〇に再会したのでヤらない理由がない

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「兎ね……兎の獣人て、トラウマなのよね……」  ミーナはべたついた髪をおしぼりで拭きながら、昔の記憶に思いを馳せる。 「トラウマとか軽々しく使うのはやめてよ。ウサギがトラウマなのは私のほうよ」  ウサギという言葉を口にする時、フリダは無意識に顔をしかめる癖があった。  フリダは子どもの頃に何者かにペットのウサギを殺されたことがある。それ以来、小さいウサギを見るだけで気分がすぐれない。  ずっと犯人だと思っていた獣人がいたが、どうやら、それも間違いだったようで、トラウマを克服できているとはいいがたい。  最近はまた、ウサギの話をすると落ち込みがぶり返してくる。  フリダの葛藤をよそに、ミーナといえば、子どもの頃に病院で偶然に目撃してしまった光景を思い出して顔を赤らめていた。 「私ね、子どもの頃に、救急患者の処置室で偶然見ちゃったの。ボコボコにされて骨折してて、毛まで削がれてね、それでも勃起してる兎獣人を……。私、あれ以来、完全に性癖を拗らせちゃって、獣人じゃないと欲情しないっていうか……」  締まりのない顔でミーナはぐふふと笑った。 「気持ち悪いことをカミングアウトしてこないでよ。公然猥褻で警察に突き出すわよ」 「まぁ、それはそれとして。私、もう獣人との恋愛は諦めようかと思って。金銭的にそれどころじゃないし、とにかく仕事が必要なの。それであの獅子獣人を押し付けられたことはチャラにするから、ね、フリダ、おねがい!」  フリダは残っていた酒を一気に飲み干した。  なんとも勝手なミーナの言い草にフリダは腹を立てていた。  しかし、実際問題、診療所は手伝いに来ていたフリダの妹が抜けて、人手が足りていないのだ。  ミーナにはやる気はないが、仕事をする能力がないわけではない。  私生活を知ればげんなりするが、学校のテストではフリダの次に優秀だったし、事務の資格もたくさん取っている。宝の持ち腐れだ。 「妹が本格的にあの家を整えて下宿を始めるみたいでね。カフェでの仕事はまだ続けるみたいだけど、診療所の手伝いは出来ないかもしれないって言ってるの。次の事務員を雇うまでの間、こき使っていいなら雇うけど? そのかわり、就業時間中に獣人を口説き始めたら、即解雇よ」 「ああん、フリダ! それでこそ親友だわ!」  ミーナは酒でべたべたのままフリダに抱き着こうとして椅子ごと蹴られた。 「いいえ、あんたとは知り合い以上の関係は無いから」  *
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