性癖を拗らせた原因の〇〇〇〇に再会したのでヤらない理由がない

9/27
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 仕事について質問を投げかければ、それなりに答えてくれるが、それ以外の話は一切しない。  魔術式の通信機で相談を受ける声もフラットだが、ミーナはそれが嫌いではなかった。  茶色い毛並みはつやつやとはいいがたいが、大人の渋みがある。 (ぐぬぬ……悪くない)  ミーナは若い獣人を愛でるのも好きだが、本当は年上の獣人とイイことが出来たらいいな、と妄想を膨らませているのだ。  振られ続けて、いつの間にか里に番を探しにやってくる獣人たちはミーナよりも年下が多くなってきていた。コニーは珍しく、番も伴侶もいない年上の獣人だった。 (でも、フリダは獣人を口説いたらクビだって言っていたし――アピールしづらいのよね)  ミーナは欲望を隠して、仕事に没頭するふりをした。もちろん下心があってのことだ。仕事に真面目で誠実なところを見せて、コニーから評価を得ようという算段だ。    実際、小器用なミーナは仕事がそこそこ出来た。  耳年増で他人の恋愛に関して適当なことを言うのは得意な方だったし、通信機越しに獣人との濃密な性生活を聞けるので、病院の受付より楽しいくらいだった。  獣人の対応についてコニーに聞くことも増えるので、コニーは嫌でもミーナと交流しないわけにはいかない。  近頃は当たり障りない会話で休憩時間に話せるまでになったが、コニーは頑なにミーナの名前を呼ぼうとはしなかった。  働いてみて、コニーは獣人が問題を起こした時に武力を行使する、獣人部隊の事務方であることが分かった。  時々、直属の上司のヒューイという獅子獣人がやってきては、黙って二人の仕事ぶりを観察して去っていく。  ヒューイに命じられて、相談者に安心してもらうために、捕り物の現場に同行させられることもあったが、暴力の現場は何度行っても慣れない。  特に獅子は格好はいいが恐ろしい動きをする獣人で、とてもではないが身近にいて欲しいなどと思えなかった。 (結局、この仕事も獣人とあまり出会えるわけじゃないなぁ)  コニーに話しかける度にぴくぴくと警戒する耳を見て、ミーナは自分が獣人には好ましい存在ではないのだと再認識してがっかりした。 *  惰性で仕事を続けていたある日、とんでもない来客が来た。 「コニー先輩、お元気ですか?」    忘れもしない、あの獅子獣人だ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!