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1.
「こっちは食あたりの薬、こっちは化膿止めの軟膏と飲み薬、これは止まらない鼻水を止める薬」
ここは都から遠く離れた沿岸地方の、そこそこ大きな港町だ。毎日早朝から市が立ち、たくさんの人で賑わっている。
その市の一画にある小さくて粗末な屋台の店で、クリーム色のミニブタが、数人の客を相手に、自分の店の商品をカウンターの上に並べて説明していた。
この店は薬屋で、ミニブタは薬師だった。
町の中に薬屋は数多くあるが、薬師がやっている薬屋はそんなに多くない。
普通なら、ただの薬屋よりもこちらの方が儲かるはずだが、ミニブタの店は繁盛しているとは言えなかった。
「ああ、熱冷ましね。普通の風邪ならこれで大丈夫。高熱が出ちゃった時はこれ。傷が化膿して熱が出た時は、これと化膿止めの軟膏を一緒に使って…」
客は犬が三人、馬とニワトリが一人ずつ。彼らは外国船に乗ってこの町に来た船員たちである。
熱心なミニブタに対して、客は心無い言葉を口にし始めた。
「本当に効くのかい?」
「この国の薬は、良く効くと聞いたことがあるが…」
「あんたのようなミニブタが作った薬じゃあな」
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