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あれから
あれから数週間。
製薬会社や治験紹介サイトから送られてくるメッセージを全て無視して、なんとか日常に戻ってこれた。
最近では夜に眠れるようになったし、唐突に叫びたくなることもない。これだけ時間が経てば副作用だって起こらないはずだ。大学生活も至って順調そのもの。
ノートを見返し、気付いたことが幾つかある。
明らかに採血の量と頻度が多かったことと、食事のバランスだ。
何の疑いもせずに食べていたメニューは、貧血予防の食材ばかりだった。
後々になって調べてみると、俺が貰うはずだった治験の給金より、『抜かれた血の値段』の方が高かった。
それを何に使うつもりだったのかは、想像もしたくない。
世の中、美味い話なんて無かったんだな。
真面目にコツコツと、汗水たらして働く方が性に合っていたんだと思う。
あ、そうだ。
大学に行って良かったことが一つある。
こんな卑屈な俺にも、友達が出来るものなんだな。
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