おくすり手帳

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 今だからこそ笑って話せるんだけど、わたしって中学の頃から自傷癖があったんだ。別に本気で死にたかったわけじゃないんだよ。ほんとに。ただ嫌なこととか、自分に嫌気が差したときに、どうしても自分を傷つけないとダメだったの。最初は手の甲をつねるだけだったんだけどね、どんどんエスカレートしてきていつの間にか鞄にカミソリとかカッターとかを入れとかないと落ち着かないようになってた。 そういう時はね、いつも声が聞こえるの。わたしだけにしか聞こえないたくさんの声。死んじゃえ、死んじゃえっていう声が頭の中でずっと聞こえるわけ。ほんと参っちゃうよ、あれにはね。  この話をするのはキミが初めてだよ。本来なら半年前に話してるはずだったんだけどね。何もかも全部ぶちまけちゃうおうと思ってさ。でもよく考えてみたら、わたしたちって面と向かって話したことってないじゃん? 今更、キミと面と向かって何を話せば良いかわかんなくてね。  お医者さんにはさ、なにかやりたいことを一つでも見つけるといいよって言われたんだ。朝起きてなにか一つでもやりたいことがあればそれだけで生きていく理由になるって。でもさ、その時のわたしにはほんとにやりたいことなんて何一つも思い浮かばなかったの。人生においての三大悲しいことの一つって、自分に夢がないと気づいた時だと思うんだよね。え? じゃあ残りの二つは何かって? そんなの決まってるじゃん。体重が増えたときと、お腹が空いてるときだね。これは間違いない。
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