おくすり手帳

4/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
……さて。実を言うと、この手紙はここから本題になるんだよね。  わたしはこれから家の近くにある狩川に行きます。キミが使うはずだった大量の睡眠薬を持ってね。ダメじゃん。せっかくお医者さんからもらった薬を飲まずにこんなにストックしとくなんてさ。だからこの大量の睡眠薬はわたしが責任をもって処分させてもらいます。処分の仕方は教えることはできないかな。まあでも、川に捨てたりなんかはしないよ。間違ってお魚が食べたりなんかしたら、環境破壊に繋がるかもしれないからね。  どうしてわたしにこの大量の睡眠薬を処理する責任があるのかキミはきっとわかんないだろうね。だってキミは結局自分の家に誰かが入り込んでいたのにも気づかなかったんだから。  わたしには特に身寄りがないから、遺書なんて読んでくれるのはキミくらいしか思い浮かばなかったんだよね。だから最後のわがままだと思って許してくれると嬉しいよ。まあでも、おくすり手帳の最後のページに遺書があるなんてどう考えても縁起が悪そうだから、これを読み終えたらすぐに新しいおくすり手帳に買い換えちゃってもいいよ。  とりあえず、わたしが書きたかったことはこのくらいかなぁ。もう書く場所もなくなってきたし、キミが帰ってくる前にこのおくすり手帳を元々あった位置に戻しておかなくちゃならないから、うかうかしてられないもんね。  またキミは一から薬を集め始めてるのかもしれないけどさ、せめて薬が集まりきるまではのびのび生きたらいいんじゃないかな。その間にキミにも楽しいことが見つかるかもしれないしさ。  じゃあ、わたしはそろそろ行くね。もうキミがわたしのあとをつけて来ないことを祈ってるよ。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加