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<1・ウラミ。>
お腹が痛くなってトイレに駆け込む。残念ながら、野間綾乃にはよくあることだった。幼稚園の頃からお腹が弱くて、特に緊張するとすぐ下痢をしてしまう典型的なタイプ。残念ながらその体質は、高校生になった今でも変わっていないらしい。
「う、うう……」
下腹部がキリキリ痛む。最初の波は超えたと思ったが、しっかり出してもお腹の痛みがひかない。自分ですりすりとお腹をさすりながら、滲んだ視界で床を睨んだ。大きい方をすると、特にそれが腹痛を伴ったものであると、どうして涙が出てくるのだろう。苦しいからだろうか。それとも、心のどこかで今の自分が情けないと思っているからだろうか。
ふうふうと息をしながら踏ん張り、それが終わればトイレットペーパーを手に取るということを繰り返す。カラカラカラカラ、と回る音さえ腹立たしい。このままでは休み時間が終わってしまう。ただでさえ先生に嫌われているのに、このまま授業をサボったと思われるのはもっと最悪だ。
さっさと終わらせて教室に戻らなきゃ、そう思った矢先だった。
「きゃあっ!」
ばっしゃん!と上から降ってくる水。あまりの冷たさに、綾乃は悲鳴を上げることになった。思わず、ドアの上の方を見つめる。水をぶっかけたホースがするすると引っ込んでいく様が見えた。同時に、遠ざかったいく複数の足音と、少女達の笑い声も。
「……ふざけんじゃないわよ」
ぎり、と拳を握りしめる。
綾乃は今、クラスメートからいじめを受けているのだった。あまりにも理不尽で、腹立たしい理由で。
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