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 目が覚めると、森の中だった。  なんでこんなところにいるのだろう。記憶も全くない。  辺りは静かだった。森の中だからかとも思ったが、鳥の声さえ聞こえない。時折風に木々がざわめくくらいだ。  その時ふと気配を感じて振り向き、ぎょっとした。  座り込む私を見つめている少年がいた。  年の頃は十四、五くらいで私と同じか少し上に見える。細い体に着ているのが白いシャツと黒のズボンなので、学校の制服を着ているみたいだ。  そしてさらさらの薄茶色の髪と、その下の、透き通る宝石のような深紅の瞳。 「……覚えてないんだね」  どこか中性的な、まろやかな声だった。  彼は私を悲しげな目で見つめたあと、ふっとその姿を消した。   「君がその力を持っていてくれたから、僕は君に会えたんだよ」  空間から彼の声が聞こえた。そうだ、と私は思い出す。  私には生まれた時から人には見えない、聞こえないものを見聞きする力がある。  そのとき、風が一際強く吹いて、木々のざわめきが大きくなった。心なしか辺りが暗くなった気もする。  ただならぬ雰囲気に、私は思わず立ち上がった。
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