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 17時を回った頃、僕はそわそわした面持ちで神社の境内の階段に腰を下ろしていた。別に約束をしているわけではないのに、妙な緊張があった。  田舎の夏祭り、と聞いてもイメージが湧かなかったが都会のそれとほとんど変わらなかった。いくらか出店の種類は少ないように思えたが、定番となっている型抜きや射的などは変わらずあったし、私服や浴衣姿の人々がめいめいに楽しんでいた。  そんな人混みの中、無意識のうちに僕の視界がとらえた姿。思わず腰が浮き、急いで駆け寄る。陽菜だった。 「やあ」 驚いたような表情でこちらを見る陽菜。格好は昨日とは色違いのワンピースを着ていた。 「優くん。来てたのね。おうちの人と一緒?」 「ううん、一人だよ。じいちゃんとばあちゃんが行ってこいってさ」 「よかった。私も一人なの。よかったら一緒に回らない?」 願ってもない、という顔で頷く。 昨日会ったばかりなのに、どこか浮足だった気持ちだった。いや正直なところこの時の僕は陽菜に対して恋心に近い感情を持っていた。  それはある種、誰しもが通る青春の通過儀礼のようなものなのかもしれない。もしくは家庭の事情で赴いた田舎町での偶然の出会い、という特殊なシチュエーションに酔っていたのかも。何にせよ僕らは一緒に祭りを回ることになったのだ。 「ご飯は食べてきたの?」 と陽菜が聞くので、僕はううんと首を横に振る。 「そうなんだ。私はちょっと食べてきちゃった」 「じゃあ僕がご飯買うから、ちょっとだけ食べる?」 そう言うと陽菜は嬉しそうに頷いた。
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