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 そこからの時間はあっという間だった。焼きそばやらチョコバナナやらを分け合いながら空いているスペースを見つけて、昨日と同じように思い思いの話をした。  陽菜は昨日よりも打ち解けてくれたようで、随分と笑顔が増えたように見える。それが何より嬉しかった。  日がすっかり落ちて祭囃子が最高潮に達した頃、周りのざわめきが一際大きくなった。そろそろ花火の時間なのだろうか。 「あ、そういえばさ。さっき陽菜のお母さんに会ったんだよ」 その言葉を聞いた陽菜の表情を僕は今でもはっきりと覚えている。あれはそう・・・能面のような表情。ぷっつりと感情の回路が切れてしまったように陽菜は無表情で「それで?」と続けた。 「え、あ・・・いや。それだけだけど」 瞬間、花火が空に弾けた。陽菜の横顔を赤や緑の光が照らしては消えていく。 「優くん。私ね。お母さんにいつも殴られるんだ」 ぽつりと陽菜は言った。
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