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途方に暮れる彩佳の顔が容易に想像できそうだが、いやいや、本人は落ち着いたものだ。彼女にとって、これは“よくあること”。十分に想定内の出来事なのである。
充電量が40%を切ったスマートフォンを改めて手に取り、慣れた手つきで、駅前よりもう少し広い範囲で宿泊施設を検索する。
「おおっ!」
1件のヒットがあった。しかし、よくよく見ると、“わけあり”の匂いがプンプンするようなビジネスホテルである。素泊まりで2000円。外観の写真は、今にも崩れ落ちそうな、“お化け屋敷”といった様相である。ネットの書き込み欄には、夜中になると、天井裏からネズミの足音がひっきりなしに聞こえてくる。時として、通気口からネズミが這い出してきて、気が付いたら、枕元に…、なんてことも珍しくない、とある。
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