Episode.1

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「本当だったらさっちゃんみたいに若くて可愛い女の子をお嫁にもらうことなんて出来なかった。さっちゃんは僕に対して好きという気持ちがないにも関わらず結婚してくれた。それだけで僕にとってはありがたいことだよ」 「……」 「だからね、僕はさっちゃんに何も求めないよ。夫婦だからとか、妻だからとか、そういった気持ちでさっちゃんに酷いことをしたくないんだ」 「……」 (私は仏様と結婚したのだろうか) 何故かそんなことを思ってしまった。 「そういうわけだからさっちゃんは気兼ねなく此処にいてくれるだけでいいんだからね」 「……ありがとうございます、秀司さん」 「お礼はいわなくていいから」 「でも私、セックス以外のことはちゃんと妻らしいこと、しますから」 「っ!」 私の言葉を受け一気に真っ赤になった秀司さん。そんな彼を見ているとやっぱり湧き上がるのは(本当……面白い人)という気持ちだった。 そうして私と秀司さんは一風変わった夫婦生活を送ることになった。 体の関係のない夫婦生活。忙しい夫を支える妻としての役目だけは完璧にこなそうと私は決意した。 だけどそんな日々の中で私は私自身の様々な変化をじわじわと感じることになって行くのだった──。
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