Episode.2

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「ただいま」 「おかえりなさい」 その日、夕方には帰宅した秀司さん。私はいつも通り玄関先まで迎えに出た。 「さっちゃん、今日病院に来たんだって?」 「え……どうしてそれを」 「今日さっちゃんを診た先生が教えてくれた」 「親しい先生なんですか?」 「というか、一応循環器内科の先生にはさっちゃんの情報を教えてあるんだ。僕の妻だからもし来院したら教えて欲しいって」 「そう、なんですか」 「あ、もしかしてそういうの、ダメだった?」 「え?」 「よく知りもしない先生に詳しい情報を知られるの、嫌だった?」 「いえ、そんなことはないです」 「そう、よかった」 「……」 秀司さんが仕事関係の人に私のことを話してくれたのは嬉しいと思った。ただ少しだけ恥ずかしさがあっただけで連携が取れていると知ったら心身的、精神的にも安心するのだった。 「季節の変わり目は気をつけないとね。あまり無理して家事とかしなくていいからね」 「……ありがとうございます」 「ははっ、敬語も。いつまでも余所余所しくいわなくていいんだよ」 「……うん」 ポンッと頭に置かれた大きな掌にドキンと胸が高鳴った。 (あ、消毒の匂い) 不意に横を通り過ぎた秀司さんから病院の匂いがした。白衣を着ていなくてもその匂いで秀司さんはお医者さんなのだと認識させられた。 それも私が安心感に浸れる要因のひとつだった。
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