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夫が医師で頼りがいのある歳上で、そして何より優しい。おまけに病気がちで地味な性格の私なんかを好きだといってくれる奇特な人。
(どうしてそんなに私に都合のいいことばかりなんだろう)
今のこの現状があまりにも恵まれ過ぎていてどうして? という気持ちは昼間のあの言葉によって理由づけられそうになっていた。
『本当のところはどうなんだろうねぇ。まぁ寺岡先生と下平先生、仲良かったけど』
『でもまぁ、アレは完全に寺岡先生の片思いって感じだったけどねぇ』
(もしかして私が叔母さんの姪だから……)
叔母の代わりに姪の私を──という理由を突き付けられるとなんだか納得してしまう感じがした。
あぁ、だから私と結婚したのか、と。
「さっちゃん、どうしたの?」
「!」
ぼんやりしていた頭に秀司さんの声が響いた。
「気分悪い? 大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「そう? あ、キッチンの鍋の火、もう消してもいいの? 随分コトコトいってるんだけど」
「あ、はい。ひと煮立ちしたら完成だから」
「了解。あとは僕がやるからさっちゃんは座ってて」
「でも仕事で疲れているのに」
「シチューをよそってサラダを盛り付けるだけでしょう? 簡単簡単。大した手間じゃないから」
「……」
こんな光景は今までもあった。仕事が終わって家事の途中を手伝ってくれることが何度かあって、純粋にその優しさが嬉しいと思っていたけれど……
(その優しさは私を通して叔母さんに向けられているのかな)
なんだか今までのようにその優しさを素直に受け止めることが出来なくなっているような気がした。
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