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ゴールデンウイークの中日。休暇が取れた秀司さんはベランダに家庭菜園を作ろうと朝から大わらわだった。
開店と同時にホームセンターへ行き、プランターと腐葉土、そして幾つかの野菜の苗を購入して来た。
「胡瓜にトマト、ピーマンに茄子。とりあえず初心者には妥当なものかな?」
「早いと7月には収穫出来るんですって」
私は苗に付いていたタグを見ながら秀司さんに話しかけた。
「そうか、楽しみだね。美味しく出来るように頑張って世話しないとね」
「私、お水あげます」
「うん、ありがとう。ある程度伸びて来たら支柱が必要か──しまった、すっかり忘れていた」
「買いに行きますか?」
「また今度でもよさそうだよ。それよりそろそろお昼になるね。昼食の準備をしようか」
「あ、私が作ります」
ベランダから部屋に入って洗面所で手を洗いながら話す。
「いいよ、休みの日ぐらい僕が作るよ。さっちゃんはテレビでも観ていて」
「そんな、朝食も作ってもらったのに」
「好きなんだよ、料理。だから作らせて」
「……」
秀司さんと結婚してから知ったことが沢山あった。
早起きが苦手ではないこと。面倒臭いと言いつつも料理が好きで時間がある時は割と手の込んだ料理を作ってくれること。意外と涙脆くて子どもと動物が出て来る番組には目を潤ませていること。
──それに……
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