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「何か悩みでもあるの?」
「!」
心配気に私を見つめる秀司さんの視線にドキッと胸が高鳴り、反射的に視線を逸らしてしまった。
(やだ……私、赤くなっていない?)
なんだか秀司さんとまともに顔を合わせることが出来なくてそそくさとリビングへと戻って行った。
「さっちゃん」
不意に掴まれた腕。そして向き直された視線の先には身を屈んだ秀司さんの顔があった。
「ねぇ、何か不満に思うことがあったら言って欲しい。さっちゃんには嫌な気持ちや思いで毎日を過ごして欲しくないんだ」
「……秀司さん」
「僕には言い難いことだったら下平さんに言ってもらってもいいから」
「っ!」
(なんでここで叔母さんが出て来るの?!)
秀司さんから叔母の名前が出た瞬間、胸がズキンと痛んだ。
(やっぱり秀司さんは叔母さんのことが──)
考えないようにしていたことが再び浮上して来てとても嫌な気持ちになった。
秀司さんが言った『嫌な気持ちや思いで毎日を過ごして欲しくないんだ』の実践を今まさにしているということに気が付き、私は何処かの螺子が一本飛んでしまった気がした。
そして気が付けばあり得ない行動に出てしまっていた。
屈んでいた秀司さんの体に抱き付く形ですがった。
「わっ!」
勢い余った秀司さんの体はそのまま私に押し倒される形で廊下に寝転んだ。
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