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「さ、さっちゃん?!」
「……て」
「え」
「………だ、いて……ください」
震える口元から懸命に言葉を紡いだ。
「秀司さん、私をだっ、抱いて、ください」
声を震わせながら秀司さんに抱き付いた。
だけど秀司さんからの返事はなく、どうしたものかと思いながら秀司さんの体に埋めていた顔を恐る恐る上げると、そこには真っ赤になった秀司さんが何ともいえない顔をしていた。
「秀司、さん?」
「!」
秀司さんの顔を覗き込みながら声をかけるとハッと我に返ったような仕草をした。
「あの……秀司さ──」
「な、な、なんで」
「え」
秀司さんはどもりながら言葉を吐き出した。
「なんで、さっちゃん、急にそんな……」
「……」
「そんなことを……」
「~~~」
秀司さんが顔を赤らめ必死になっている様子を見ていたらつられて羞恥を覚えてしまった。
(わ、私はなんてことを!)
顏に熱が集まるのが分った。体中からじっとりとした汗が染みて来たような不快感に戸惑った。
(どうしよう……どうしよう、秀司さん呆れている?!)
秀司さんは次に来る私の言葉を待っているようだった。だけどこういう時に何を言ったらいいのか分からない。
恋愛偏差値がどん底の私にはこの状況があまりにもハードルが高くて、そして分からな過ぎて咄嗟に心にもないことが口から出てしまった。
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