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「こ、子ども」
「え」
「子どもが早く欲しくて」
「……」
「だって私、いつ死ぬか分からないから……その、早く生んで育てないと後悔する……と、いうか──」
「……」
──この時、私は間違いを犯してしまった
『だから余計に後悔しているの! ここまで生きられたのなら早い内に結婚して子どものひとりやふたり生んでいれば子どもたちの成人した姿を見られた筈なのに! それなのに……それなのにぃぃぃぃぃ~~~』
頭に浮かんだのは叔母のこの言葉だった。
「早く子どもが欲しくて……だ、だから」
「……」
私が言葉を発する度に秀司さんの顔の赤みは薄れ、感情の読めない表情になっていた。
やがて秀司さんは私を優しく退けさせ、そのまま無言でリビングに行ってしまった。
(……何?)
今までに感じたことのない緊張感が今、そこら中に充満していた。私は秀司さんの後に付いておずおずとリビングへと向かった。
「さっちゃん、もうご飯、よそってもいい?」
「……え」
秀司さんは何事もなかったようにキッチンに用意していた夕食をテーブルに配膳していた。
「お味噌汁はもう少しだけ温めた方がいいかな」
「……」
「あ、その前に着替えて来ないとね」
「……なんで」
「え」
秀司さんがネクタイを緩めながら寝室へ向かおうとしたのを止めた。
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