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秀司さんに抱いてと迫り拒否されたあの夜から一夜明け、私はみっともなく部屋に閉じこもっていた。
飽きもせずベッドで声を押し殺しながら泣いていると部屋のドアをコンコンと叩く音と共に秀司さんの声が聞こえた。
『さっちゃん、あの……ご飯』
「……要りません」
『でも、昨日から何も食べていないでしょう』
「お腹、空いていないんです。放っておいてください」
『……』
素っ気なく答えるとやがて足音が遠ざかって行った。その状況が辛くて、苦しくて胸が詰まる。
(やっぱり秀司さんが好きだったのは私が叔母さんの姪という立場だからなんだ)
私自身を好きじゃなかったのだと思い知らされてとても悲しかった。
(だって私は……)
『さっちゃん』
「!」
再びドアの向こうから秀司さんの声が聞こえた。
『仕事に行ってくるね』
「……」
『今日は帰りが遅くなると思うから先に寝ていてね』
「……」
『あと、食事の用意がしてあるから食欲が出たら食べてね。じゃあ、行って来ます』
「~~~っ」
(どうしてそんなに優しいの…!)
少し前までは幸せな気持ちにさせてくれたその優しさが今はとても辛かった。
(好きじゃないくせに……私のこと、本当に好きじゃ──)
止まっていた涙がまた溢れて来てしまい、誰も居なくなった家でむせび泣いたのだった。
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