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玄関ドアが開錠される音と共に「はぁ~~~今日も疲れたぁ~~」と小さく聞こえた。
(あ、帰って来た)
リビングに向かっている気配を感じ、消していた室内の灯りをパッと点けた。
「わっ! な、何?!」
「……叔母さん」
「?! ──幸穂? あんたなんでいるの?!」
「……里帰り」
仕事から帰って来た叔母は私が家に居ることに酷く驚いていた。
「わぁお! 幸穂の料理久しぶり~~~。いっただきまーす」
夕食を用意して待っていた私に叔母は何も訊かなかった。だけど夕食を共にしている席で叔母は突拍子もないことを言った。
「しっかしいきなり里帰りって……。なぁに、妊娠でもしたの?」
「ブッ!」
「わっ、吐き出さないでよ。ほら、布巾」
「叔母さんがいきなり変なことを言うから」
「ヘンなこと? 何が」
「に、妊娠だなんて……そんな」
(そこに至る行為すらしていないのに!)
「なんでよ。結婚してんだから当然考えられる理由でしょう?」
「……」
「おーい、幸穂? ……まさか喧嘩したの?」
「……」
「でもそれはないか。寺岡くん、幸穂にゾッコンだしね」
「!」
叔母の言葉に動揺して思わず持っていた茶碗を落としてしまった。
「わっ、何してんの幸穂。ご飯が飛び出してるよ」
「あっ……」
幸い茶碗は割れていなかったけれど中に入っていたご飯が盛大にテーブルの上に散乱した。私は少し震える手でご飯を茶碗に戻していた。
「──ねぇ、何があったの」
「……」
「さーちほ」
「……」
叔母に何度問いかけられても中々口を開くことが出来なかった。
「……ふぅ、仕方がないな。寺岡くんに直接訊くか」
「!」
叔母が携帯を手にしたのを見て思わず「止めて!」と大きな声を出してしまった。
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