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叔母さんは一息ついてから昔を懐かしむように秀司さんとのことを話し始めた。
「わたしと寺岡くんは医大で先輩後輩という関係から仲良くなったの。寺岡くんは医大の時から子どもが好きで小児科医を目指していて、それは兄弟の多い寺岡くんらしい選択だなと思った」
「……」
(そういえば秀司さん、言っていたな)
兄弟の多い環境で育った秀司さんは病気に罹って苦しむ兄弟たちを子どもながら助けることが出来ない虚しさから小児科医を目指すようになったと。
病に苦しむ子どもをひとりでも多く助けることの出来る医師になりたいと目指し今に至っていると。
(それを訊いて凄いなと思ったんだよね)
結婚してから知った秀司さんの魅力のひとつだ。
「そんな寺岡くんはわたしにとっては気のいい友人のひとりだった。だけど寺岡くんは違った」
「え」
「わたしが医大を卒業する時にさ……告白、されたんだよね」
「!」
(秀司さんが叔母さんに?!)
それはとてつもない衝撃だった。やっぱり噂はある意味本当だったのだと。
「でもわたしは断ったよ。だってわたしは恋愛しないって決めていたから」
「……」
「どうせ早死にする身なんだもん。真剣な恋なんてしたって無駄だって思っていたからね」
「……叔母さん」
「でも寺岡くんはそんなわたしを怒ったんだよね。告白を受け入れない理由を早死にするからで片付けるな! ってね」
「秀司さんが?!」
(そんな熱血なことをいうタイプではないと思っていたのに)
ここでも意外な秀司さんの一面を見た気がした。
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