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「自分のことが好きか嫌いかで返事をして欲しいって言うからはっきりと好きじゃないって返事したらすっごく落ち込んでさぁ。おいおい大丈夫か? って心配したんだけどあいつ、吹っ切れるの早いんだよね。すーぐ立ち直ってこれからもいい友人でいてくれって言ったの」
「……」
「それ以来、寺岡くんはわたしが色んなことで退廃的になるのを傍で監視しているんだよ」
「監視? 秀司さんが?」
「そう。だからわたし、前よりもうんと考え方がポジティブになったんだよ? もっと毎日を愉しく生きようって」
「……」
(それって秀司さんが叔母さんを変えたってこと?)
そう思ったら少し胸が痛んだ。なんだかふたりには私の知らない絆が太くあるように思えてしまって。
「だからね、だからこそ幸穂に寺岡くんをあげたいって思ったの」
「え」
叔母さんの言葉に鬱々としていた気持ちが一瞬薄らいだ。
「ほら、幸穂も昔のわたしみたいな考えをしていたじゃない? それを改めさせたいなって思ったの」
「……」
「わたしが後悔したことを幸穂にも味わわせたくなかった。早死に家系だからって色んな事を諦めなくてもいいんだって知って欲しかった。特に恋愛に関しては──ね」
「……」
それは同じ環境に身を置く叔母が後悔した人生を送って来たと肯定しているみたいだった。
秀司さんによって変わって行った人生観。どうせ早くに死ぬのだから恋愛なんてしなくていい──そんな考えは馬鹿らしいと叔母は悟った。
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