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「おかしいでしょう? こっちが見合い設けて嫁にもらってくれって頼んでいるのにさ。わざわざ律儀にそうやってわたしに頼んだんだよ」
「……」
「大切な姪御さんをいただくのだからって。まぁ、そういうちょっと固いところもあるから、だからこそなんだと思うよ」
「え?」
最後の言葉は何に対してのことなのか分からなかった。
「幸穂、あんたちゃんと好きって気持ちを寺岡くんに伝えた?」
「!」
「先刻も言ったけどあの男は変に固いところがあるの。だから相手のことを考えるあまり自分の気持ちを押し殺すことに慣れてしまっている」
「……」
「だからはっきり言ってやらないと分からないんだよ」
「……」
「好きだから抱いて欲しい、好きだからあなたの子どもが欲しいんだって」
「!!」
(な、なっ…!)
「そこまでハッキリ言わないと分からないんだよ、あいつは」
「~~~」
叔母に指摘され昨夜のことを反芻する。
私は秀司さんに何を言った?
私は秀司さんのことが好きだと──だけどそれを知らない秀司さんが私からあの一連の流れを受けてどう思ったのか。
(私は……間違ってしまった!)
そして私が如何に中途半端な言葉で秀司さんを翻弄してしまったかと恥ずかしく思ったのだった。
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