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午後から予約が入っていた検査が思った以上に時間を食い、予定していたよりも遅い帰宅になった。お蔭で明日は休みになった。
「はぁ……疲れた」
今日はゆっくり寝られる──と思ったが……
(さっちゃん、まだ拗ねているかな)
ふと昨日の出来事を思い出してカッと顔が熱くなった。
(いきなりあれは反則だよな)
こっちがどれだけ我慢しているのか彼女は知らないのだ。
且つて好きだった人の姪。どこか彼女に似た面影が目を惹いた。
だけど彼女は彼女ではない。下平幸穂というひとりの女性として見なくてはいけない。
そう割り切って付き合って行く内にいつの間にかごく自然に彼女の存在が心の中に住み着いてしまっていた。
最初は大学時代の彼女を彷彿とさせる世を儚むような思考に引っ掛かりを感じたが、純粋に彼女に彩のある世界を与えてあげたいと思った。
年甲斐もなく15も歳下の少女に現を抜かすようになった。今では彼女のことが愛おしく堪らない。
(なんて、これじゃあロリコンと蔑まれても仕方がないよな)
歳若い少女との結婚。浮かれても仕方がない状況にもかかわらず、それは思うように行かないことの連続でまるで苦行を強いられているようだった。
自分の欲望に忠実になればきっと彼女を怖がらせ、嫌われてしまうだろう。
彼女から割り切った行為を示唆されても、それは今の僕にとっては到底受け入れ難いものだった。
例え彼女を傷つけてしまったとしても──
(愛しているが故にそれを行為で表すことが出来ない)
純粋無垢な彼女の気持ちを尊重しつつも時々凶暴な気持ちになってしまう自分が情けないなと思ってしまうのだった。
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