255人が本棚に入れています
本棚に追加
玄関からカチャッと鍵が開く音が聞こえた。
(帰って来た!)
そして静かに廊下を歩く気配に胸の高鳴りは最高潮だった。
リビングに入り電気を点けた秀司さんはソファに座っている私を見つけ飛び上る程に驚いていた。
「ぅわっ?! ……さ、さささ、さっちゃん?!」
(この驚き方、今日は二回目だ)なんて思いながら「お帰りなさい、秀司さん」と出迎えた。
「なん、なんで電気……」
「考えたいことと決心したいことがあって暗闇の中で精神統一をしていました」
「はぁ……精神統一って……え? か、考えたいことと決心したいこと?」
「……」
秀司さんが明らかに動揺している。そんな様子を見ていると私の方は徐々に心が落ち着いて来ているように思えた。
(ちゃんと伝えよう、私の気持ちを)
何時間も暗闇の中で気持ちを確かめた。そして私は私自身が望む未来を手に入れるために頑張ると決心したのだ。
「あの……さっちゃん」
「秀司さん」
「はい!」
ソファから立ち上がった私は静かに秀司さんの前に立った。──そして
「秀司さん、私は秀司さんが好きです」
「……え」
「秀司さんと結婚して共に生活を送るようになって私の気持ちは変化して行きました」
「……」
「秀司さんの優しさに触れて守られていると実感する度に秀司さんに対する気持ちが甘いものになりました」
「……」
「それに気が付いたから……あの、昨日は……昨日、あのような行動に……出てしまいました」
「……」
「あの時は慣れないことと経験値が皆無のために変なことを口走りましたが、本当は私が……本当に言いたかった言葉は……」
「……」
「秀司さんのことが好きで……あ、愛しているので抱いて欲しい、です」
「!」
「好きだから、愛しているから秀司さんとの子どもが欲しいんです」
「……さっちゃん」
顏が熱い。きっと自分で思っている以上に赤くなっているだろう。
「さっちゃん……それ、本当?」
「……」
「本当に……僕のことを……」
「……」
(秀司さんの顔も赤い)
そんなことを思いながらこくんと首を縦に振った。
最初のコメントを投稿しよう!