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正直な気持ちを伝えるのがあんなに怖かったのに、いざ口に出してみるとそれは意外なほどにスムーズに私の中から流れ出た。
「秀司さん、私を本当の妻にしてください」
私のその言葉が合図だった。
急に力強く抱き寄せられた私の体はすっぽりと秀司さんの腕の中に収まり、そして屈んだ秀司さんの唇が私のものに重なった。
(キス…!)
それは結婚式の誓いのキス以来だった。
(あの時のキスが私のファーストキスで……)
軽く触れただけのキスにも関わらずとてもドキドキした。
だけど今しているキスはあの時のものとは全然違っていた。秀司さんの舌が私の中に入り込み私の舌と激しく擦り合っていた。
(な……何、これ)
これが噂に訊いたディープキスというものなのかと考えながらも秀司さんからの貪るようなキスを必死に受けとめた。
やがて私の脚腰がガクガクと震えてしまってその衝動で唇が離れてしまった。
「さっちゃん」
「!」
崩れ落ちそうになった私の体を秀司さんが支えそのままお姫様抱っこをされた。
(なっ…!)
「さっちゃん、もっと食べないとダメだよ。軽過ぎ」
「~~~」
この体勢といわれた言葉に恥ずかしさを感じて思わず顔を秀司さんの胸に埋めた。
「さっちゃん、いいんだよね」
「……え」
問われたことに反応して顔を上げるとすぐ間近に秀司さんの顔があった。
(近い!)
「さっちゃんを抱いてもいいんだよね」
「あ……あの、今日はもう遅いし……秀司さん、仕事で疲れて──」
「疲れなんて吹き飛ぶよ。さっちゃんを抱けるなら」
「!!」
そう言った秀司さんの顔は今までに見たことのない艶っぽい表情だった。
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