売人

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 水色のラムネの瓶を開ける。炭酸飲料のラムネじゃないが、あの瓶を模したプラ容器に入っているお菓子のラムネだ。  薬ケースの蓋を開け、二つずつ入れていく。  日曜の朝、昼、夜、寝る前。月曜の朝、昼、夜、寝る前。一週間分を丁寧に入れていく。蓋を閉めると、本物の薬のようだ。  私はケースをトートバッグに放り込むと彩葉の家に向かった。歩いていると、だんだん速足になってしまう。今日は学校に来ていたし、普通だった。だから、大丈夫なはず。  マンションの五階、角の大きな部屋が彩葉の家だった。  ドアホンを鳴らすとすぐに彩葉が顔を出した。 「持ってきたよ」  そう言うと、彩葉の顔がパッと明るくなる。 「入って」  彩葉の部屋は可愛らしいものであふれている。花柄の壁紙。薄いピンクのカーテン。白い家具。人形にクマのぬいぐるみ。  そして、その中でも彩葉が一番可愛い。私が薬ケースを渡すと、小首を傾げた。 「これだけ? 今は三個ずつだったのに」  机の引き出しから私が先週渡した薬ケースを取り出してきた。今日の金曜の朝まで空になっている。 「まだ、お昼の分、飲んでなかったんだね」  そう言うと、彩葉はキッチンから私にペットボトルの紅茶を自分に水を持ってきた。 「ごめん、催促したみたいになっちゃった」  そう言いながら、一口飲むと、しつこい甘さが口に広がった。  彩葉は薬ケースから昼の分を取り出すと、三個一度に飲み込んだ。  さすが、薬を飲み込むのはプロだ。 「夕実から薬をもらってから、体調がいいの」  笑顔の彩葉に私も笑顔を返す。よくなって、当たり前だ。前は無茶苦茶に薬を飲んでいたのだから。
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