0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そこまで言うのなら、お前に機会をやろう! それが偽薬ではないと証明して見せろ。その薬モドキを使ったのち、この刀で自らの首を掻っ切れ。『不死の薬』だというのならお前は死なないはずであろう。もし、できぬというのなら引回しのうえ、死罪だ」
藩主は紋十郎の前に刀を投げ出した。
逼迫した状況に紋十郎は息苦しくなった。
発汗も止まらず、その一方で体の先が凍ったように冷たくなっていた。
紋十郎は声を振り絞った。
「……できません。私は人の命を救うために売薬を行っております。この『不死の薬』は苦しんでいる人を救うために役立てたい。そのため、私は自分には使えません。私の命はどうなっても構いません。ですから、この薬だけは……人の命を救うためにお役に立ててください。どうか……お願いします……」
「決まりだな……。では、この者を……」
「藩主様! 大変です! 門扉の前に人が押し寄せてきてます!」
部屋の扉が勢いよく開き、報告しに来た武士によって藩主の言葉が遮られた。
最初のコメントを投稿しよう!