不死の薬

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「何事だ!」 「外をご覧ください!」  藩主が屋敷の外を見ると、一見して分かるほどに大量の人だかりができていた。 「城下町の人々でして、『紋十郎を殺すな!』と申しておるようです。藩主様、恐れながら申しあげますが、紋十郎を処刑すれば、民の反感を買うことで藩の存在が危うくなります。今回のところは……」  城下町の町民は紋十郎が殺されるという話を聞いて一致団結して屋敷に詰めかける運びとなり、現在の出来事が起きた。  結果として、町民と築き上げてきた信頼が紋十郎に助け舟を出す形となったのだった。 「仕方がないか……。だが、紋十郎よ! お前の命は助けてやるが、その代わりに条件がある。その薬モドキを今ここで破壊しろ。加賀藩の者たちのようにそれに期待する輩が出てくるかもしれん。それは存在してはならない」 「分かりました……」  苦渋の決断であったが、紋十郎は城下町の人々の気持ちを無下にすることなどできなかった。  紋十郎は懐から乳鉢と乳棒を取り出して、丸薬を粉々にした後、部屋の外へと粉末をばら撒いた。  そうして、紋十郎は解放され、屋敷の前にいた人だかりもいなくなった。  しかし、その晩、紋十郎は殺害された。
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