プロローグ

1/1
前へ
/6ページ
次へ

プロローグ

 僕が助手として働いている「蔵居無(くらいむ)診療所」には、今日もたくさんの患者が訪れる。  田舎町の小さな診療所で、去年まで廃業寸前だったが、最近は隣町や他県からも患者が来るようになったのだ。  人気の理由は、先生がどんな病気も治してしまう凄腕の医者だからだ。  最近先生が独自に開発した万能薬「フォルシード」が評判で、SNSで拡散されてたちまち話題になってしまった。  僕は毎日嬉しい悲鳴を上げながら働いている。  元々近所の老人しか来ないような診療所だったから、カルテの作成や事務仕事なんかは全て僕の仕事だ。最近は来院する患者の数に比例して作業量が増えており、残業も増えた。  まあ、その分給料も今までの倍以上は貰っているから文句は言えないが。  それに、処方する薬も最近は「フォルシード」一種類だけになったから、薬の管理や患者さんへの説明なんかはずいぶん楽になった。  そんなわけで、今日も診療が始まる。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加