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「_____今晩私が頂くのは、お前のたま_____」
「あっははは!」
夜中11時。
平咲(ひらさき)村の大きな家から軽快な、乾いた笑い声が聞こえてきた。
姫宮家の一室からである。
「...ふ...ふふっ」
_____ガシャッ
「メユうるせぇよ!お前以外全員寝てんだぞ!」
「んだよ、だから俺の部屋だけ離れてんだろ」
[山形メユ 13歳 中学一年生
長い黒髪が特徴の少年。右目が隠れている。というより隠している。SNSが大好きな現代っ子]
「それでもうるせぇんだよ、はやく寝ろ!」
[山形大輝 17歳 高校二年生
メユの兄。短髪のガタイのいい青年。
弟とは正反対の性格と見た目で、サッカー部に入ってる]
「こっちはクソ田舎に連れてこられて暇してんの。なんでみんな夏はこぞってこの家くるんだ?」
「お前な...ったく」
大輝は引き戸をピシャリと大きな音を立てて出て行った。
「...なんだよ」
メユは拗ねたように吐き捨て、カバンからワイヤレスイヤホンを取りだした。
ゴソゴソ
ブスッ
「...おいしょっと」
メユは有線イヤホンを両耳につけ、姫宮家は静寂に包まれた。
「...」
タプタプ
メユは寝転がりながらしばらくスマホをいじった。
すると
_____コンッ、コココンッ、コンッ
「...ん?」
廊下から、何かが落ちる音がした。
その音はまるで、ピンボールが重力にたたきつけられている音と似ていた。
「だいにい?」
メユは思わず大輝の名前を呼んだ。
「おーい」
「...」
返事は無い。
改めてこの家の静寂を心から理解する。
メユは少し、背中に汗を滲ませながら引き戸を開けた。
この家は広すぎるが故、身内の集まっている部屋から離れれば恐ろしいほどの静寂に包まれるのだ。
それがメユにはどこか不気味に感じたのだ。
スス...
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