白昼夢物語

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「(呼ばれたからきたものの...)」 メユは卵かけご飯を食べた後、自分の分の食器を洗い着替えて泰造のいう石の蔵に来た。 そこは厚いヒノキで出来た門があり、中に入ると真っ暗で何も見えない。 「(窓もないのか...そうだ)」 カチッ カチカチっ 「(じーちゃんからパクったライターで...!)」 ボッ 「よしっ....」 ふと壁が映る。 「っ....!」 「なんだよ、これ...っ」 真正面の壁。 そこには一面に描かれた裸の鬼。 その紅い墨で描かれた鬼は大の字でこちらを見ている。 右の壁。 そこには黒い墨で描かれた鬼が。 口を開けた男の首の髪を掴んで立っている。 そして左の壁。 そこにはまた黒い墨で描かれた鬼が。 口を開けた女の首の長い髪を掴んで立っている。 「...うぅぅううう...」 「...えっ」 奥からうめき声が聞こえる。 それは正面の壁の扉から。 「(じぃちゃん、じーちゃんなのか...?)」 「(い、いかなきゃ...じいちゃん心臓が悪いんだ...!)」 コン コン コン コン 「(また、またあの音だっ、ピンポン玉が落ちるような...)」 「む、りだろ...っ」 コン コン コン コン コン ゆっくりと流れる音。 まるで木魚である。 「んぅうううぅぁぁ.....ぁあ...」 そして何者かの唸り声。 メユの視界が涙で歪む。
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