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「こいつは原因不明の言語障害だ。
入院前は喋れたのか?」
「▅▅▅▅▅▅▅____!」
「...」
「筆談はだめか?」
その低い声の中年の医者。
彼は俺に紙とペンを渡す。
震える手を押さえ、ガタガタの文字をそのa4紙に書き連ねる。
『俺は一体なぜ話せなくなった』
「なるほど、前は話せていたのか」
「これが不明だ。
外傷による影響なのか。
だが脳にダメージは一切ないんだよ」
ガリガリ ガリ
『俺は一体いつまで寝てたんだ?』
「4年」
『(...は?)』
『じゃあ、じーちゃんは...ッ!』
ガリガリガリ
「...」
『だいにいは...ッ!』
ガリガリガリ
バキッ
『あ"...あ"ぁ...ぁ"あ....!』
_____じわ
「_____霧、目の包帯を替えてやれ」
「はーい」
メユは泣いた。
ガチョウのような唸り声を上げて。
目がとび出そうな程に瞼をはじく。
伸びた髪もぐちゃぐちゃに掴み痛ませる。
メユは、彼らのその後の行方を察してしまったのだ。
「今から君に"あの日"の真実を伝えよう。辛いと思うが...君には本当のことを教えなければ」
すると医者は丸椅子に座り、"カルテでは無いなにか"をめくり始めた。
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