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「はい、これがあなたの分のおくすりです」  意識が戻る。目の前のコップを見る。次にその隣の錠剤を見る。あなたの分とは何だろう。自分は薬が必要なのだろうか。自分、何かが変だ。  ここはどこだ。確認しようとするが首が動かない。目は動く、呼吸はできる、口も動くようだが声は出せない、腕は動く、指もちゃんと動くようだ、脚は動かない。  目の前の机に手をついて思いっきり押してみる。机も椅子も固定されているようでびくともしない。見える範囲で何か情報はないかと見回してみるが何もわからない。ただ正面の空間は暗く、きっとこの空間全部がそうなのだろうと思わせる。机とその上のものだけがぼんやりと浮かび上がって見える。  手が動かせるのでとりあえず自分の身体を触ってみる。肩、胸、腹、腰、太腿、腕、手の甲、指、多分全部知っている形だ。それだけのことが妙に安心させる。頬、鼻、耳、髪、こちらも同じ。多分、多分と思ってしまうのはなぜだろう。自分は何かを忘れているのだろうか。そもそもこの場所は。 「どうしましたか」  さっきの声が聞こえる。この声はどこから聞こえるのだろう。暗いからか部屋全体が喋っているようにも聞こえる。 「どこかおかしいところでもありましたか」  何を言うのだろう。全てがおかしいという気持ちになる。自分には具体的にどこがおかしいというものはわからないけれど。  なぜだろう。なぜ自分は……。
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