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東の村に帰ると、ばあちゃんはぼくを涙ながらに迎えてくれた。
旅に出る前にくらべると、小さくなった気がした。
ぼくはばあちゃんに今まであったことを話して聞かせた。
なにも成せなかったことを謝ると、ばあちゃんは笑顔でぼくの頭をなでてくれた。
「奇跡のおくすりを作れるようになったんだね」と。
はじめは意味が分からなかった。
ただ悲しんでいる孫を慰めてくれているんだと思った。
だけど、ばあちゃんは確信を持った瞳で言った。
「間に合わせに作った薬こそ、奇跡のおくすりの正体なんだよ」と。
ぼくはとっくにたどり着いていたんだ。
奇跡のおくすり。
そんなものはどこにも存在しなかった。
信頼を重ねることに意味があった。
たくさんの人を治したぼくが作った薬だからこそ、本来なら効果があるはずのない薬に効果が現れたんだ。飲んだ人がぼくを信じてくれたから。
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