奇跡のおくすり

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 ぼくはまず、首都を目指すことにした。  人がたくさんいるところには、病や怪我に苦しんでいる人もたくさんいるはず。それに、国の北部に位置する首都はぼくが住んでいた村よりもずっと寒い。今まで本でしか見ることのできなかった薬草に出会えるはずだ。  首都までは遠い。ひとつ村を通り過ぎて、薬師のいない小さな村に滞在することを決めた。その地方で手に入らない薬や治療法は重宝されるため、薬を売り歩く旅の薬師はめずらしくない。きっとここでなら、受け入れてもらいやすいだろうと考えた。 「東の村から来ました、丹々と言います。しばらくこの村で薬師として活動しますので、お困りの方がいらしたらどうぞ気軽にお声がけください」  村の外れの小さな家を借りて、ぼくは薬師の看板を掲げた。  早朝は近くの山に薬草を探しに出かけて、昼はお店に来てくれた人に薬を売る。夜は薬を作った。  一日目にお店に来てくれたのは一人だった。二日目は三人。売れたのは傷薬と痛み止めだけ。これでは修行にならない。思っていたよりも厳しい結果だった。 「相手を知ること、知ってもらうことかぁ」  布団に入り、ぼくは天井を見上げた。  母さんの言葉を思い出す。この村に来たばかりのぼくには、信用が足りないのだろう。地道に続けていればお店に来てくれる人は増えるだろうか。  不安と期待をかかえながら、ぼくは目を閉じた。
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