奇跡のおくすり

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 三日目、山で薬草を採り終えたぼくは店に向かっていた。  空は紫色で、村はまだ寝静まっている。ふと、向こう側から歩いてくる人影に出会った。 「お仕事ですか? お早いですね」 「うちの牧場で取れたミルクを配達しています」  声をかけると、女性は俯いたまま言葉を返してくれた。 「搾りたてのミルクですか。いいですね。ぼくも買わせていただくことはできますか?」 「今は配達用しか持ってきていないので」 「そうですか……」  忙しかったのか、女性は怒ったような声を残して歩き出した。牧場に行ったら買うことができるのかを聞きたかったけど、やめたほうがよさそうだ。 「残念だなぁ」  女性に背を向けて歩き出したものの、なにもかもうまくいかない悲しさに思わずひとりごとがこぼれる。 「あ、あの。予備があるので、一本なら」  振り向いた顔の前にずいっとガラス瓶を差し出されて、ぼくは慌ててそれを受け取った。代わりにお代を手のひらに乗せる。女性の手はかすかにふるえていた。 「それじゃ」  女性が立ち去ろうとした瞬間、つむじ風が吹いた。 「あ……」  長い前髪がふわりと持ち上がり、女性の顔があらわになる。その左半分にはひどいヤケドのあとがあった。 「ごめんなさい!」  まるで悪いことをしてしまったかのように、女性は顔を隠して悲し気な声を上げた。お金を落としたことにも気付かずにぼくに背を向け走り出す。 「待って!」  ぼくはとっさにその手を掴んだ。 「あの、もしよかったら、ぼくが作った薬を飲んでくれませんか?」 「え?」 「あなたのその傷あと、完全に消すことは難しいかもしれませんが目立たないように薄くすることならできると思います!」
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